テラヘルツ波の今とこれからー移動体通信・測位技術

はじめに ー 移動体通信・測位技術のいまと未来

IEEE Vehicular Technology magazine March 2024は”Artificial Intelligence and 6G – Roadmaps for a connected world”という特集。解説論文も充実。そこで今回は6G時代の通信と測位技術を読んだ記事をもとに関連分野も含めて記載。

5Gで利用されるようになったのは、ミリ波(27.0GHz~28.2GHz, 29.1GHz~29.5GHz)。さらに次の世代となる6Gではテラヘルツ波(100GHz~10THz)の利用を想定している。

テラヘルツ波とは

テラヘルツ波の波長は、約0.1ミリメートル(100マイクロメートル)から約1ミリメートル(1000マイクロメートル)までの間をさす。これは遠赤外線(約25マイクロメートルから約1ミリメートルまでの波長範囲)もしくはミリ波やサブミリ波と呼ばれる領域に重なっている。このことから、テラヘルツ波の挙動は光と電波の中間的な挙動となる。つまり電波の透過性と光としての直進性を有し、物質の透過性・分子の振動特性、そして人体に対して安全な特性を持っている。

特に水による吸収が大きく、薬剤によって特有のスペクトルが存在することから、テラヘルツ波を医学・薬学領域で用いることは長く検討されてきている。応用領域は広いがまだまだ未開拓の分野が多い。

テラヘルツ波のこれまでの適用事例ーレーダーとしての活用(測位)

従来屋外で用いられていたのは、今回のIEEEの冊子の中にも軍用というような記載がある。

例えばJournal of Military and Information Scienceでは”Technical Report Terahertz Technology for Military Applications”という記事を見つけられる177644 (dergipark.org.tr)。テラヘルツ波の利用事例として通信・レーダー・化学物質検出(爆発物発見)といった用途が記載されており、特にレーダ利用としては以下のような絵が紹介されている。これを見ると遠赤外線により物体検出が可能であり、昨今のAIの発展から容易に対象物の分類もできるだろうことが推察できる。

また、China develops anti-stealth radars – China Militaryというように、レーダとしてテラヘルツ波ならステルス機も見つけられるといったような話も出てくる。こちらも遠赤外線と思えばそういうことも可能だろう。大きな発熱源であるジェットエンジンを抱いている以上、見つけることはできそうな気がする。もちろん、遠赤外線であるゆえに大気の影響(外気温)を大きくうけ、信号処理の面でAI活用などが必要になることが推察される。

テラヘルツ波の通信利用、おもに移動体での課題(通信だけで測位も必要)

テラヘルツ波を通信で使う上では、パッシブに遠赤外線に近い波長を受信するだけでなく、信号として発信することが必要となる。この際、テラヘルツ波の課題として半導体アンプとビームフォーミングがあげられる。100GHzを増幅できる半導体素材が未開拓、直進性の高さゆえに必要となるアンテナ技術についても課題となる。基地局のカバレッジのつくり方も5Gまでと変わってくるだろう。これは屋外で利用される移動体向けの適用可否の重要ポイントと言える。

参考日本語記事:課題山積のテラヘルツ波、モバイル利用へ新発想も | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

そこで、今回のIEEEマガジンではテラヘルツ波が対象の物質に応じて反射と透過の特性が切り替わることをいかして道路際の建物壁面をアクティブに制御しビームを届ける手法や、反射波と直進波の位相差を見ることで移動体位置を三角測量・追尾する方式などが紹介されている。直進性が高いならば位置即位してそこに電波を届けるという方法になる。

なんにせよ、まだまだ半導体やキーデバイスレベルで解決が待たれている状況と言える。

そのほか事例

建設鉱山現場での利用事例も見てみようと思ったら、サブテラヘルツという表現が出てきた。それってただのミリ波なんじゃ・・・

Underground Imaging by Sub-Terahertz Radiation (Journal Article) | OSTI.GOV


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