OceanGate titan沈没に寄せて どうしてこんな悲劇が起きてしまったのか

はじめに

最初に行方不明になったというニュースをラジオで聞いたとき、湧いた疑問はどうして浮かんでこれなくなったのか、また浮かんだのに見つけられないようなことになっていないのかということだった。
OceanGate 社の安全に関する悪評が耳に入る前に、若干の懸念が浮かんだ。

今回自分の振りかえりのため記録を残す。

安全に対する懸念1-浮かんだとして見つけられたのか?

ニュースの映像で潜水艇を見て最初に浮かんだ疑問はこれだった。

日本の深海無人探査機「かいこう」はシステムの軽量化のため安全装置である海中位置確認用トランスポンダや浮上時の夜間確認用フラッシャーは除外されてしまい、そして浮上しても見つからなかった

とはいえ今回は有人の船である。本来備わっているべきものだったのではないか。

安全に対する懸念2ーなぜカーボンファイバーを使ったのか?そしてなぜ筒だけ使ったのか?

潜るだけの機械であれば、重量はさほど重要ではないと思われそうだが先に述べたように「かいこう」でもビークルの軽量化は課題だった。そんな歴史を振り返れば、カーボンファイバーに手を出したかったOceanGate の創業者をいまさら責めるのは筋違いだろう。

設計として気になった点はカーボンファイバーのチューブの両端だ。
チューブそのものは、Composite submersibles: Under pressure in deep, deep waters | CompositesWorldの記事を読むと安全率は2.5以上確保されている。炭素繊維強化プラスチックの疲労についてはよく知られていないとはいえ、深度と線形にしか圧力は上昇しないので十分と考えたのだろう。水素燃料タンク関連の論文を見ると試験片のような形状では疲労による強度低下は進行とは見えない。しんかい2000など、安全率は1.5そこそこだ(水深x1.5⁺300mで設計)。想定通り機能すれば、カーボンファイバーという新素材であることを考慮しても十分な安全率と思われる。

形状としてどうしてもチタンの蓋と接合する両端には炭素繊維強化プラスチックの繊維が露出する。そして機械加工してチタンと接着している。
接着部分はどうしても弱い。繊維の端部からほつれる懸念もある。水圧に加えて温度も変化していく。端部に何が起きていたかは全くわからない。

疲労を計測するための音波センサが使われていたようだが、安全策として考えたときクリティカルになりうる端部がどれほどの精度で監視できていたかはとても疑わしい。対策として間違っていたのではないかと感じてしまう。
ただ私は、映画タイタニックの監督のJames Cameronはインタビューでこのセンサの情報では圧壊に対処するには遅すぎるといっていることにはくみしない。そもそも計測できていないし、計測できていれば安全率2.5の船体は十分な時間持ちこたえただろうと考えている。さすがにこの発言はOceanGate の設計者たちをバカにしすぎているのではないか。

さいごに

カーボンファイバーによる軽量化がなされたからこそ、5人もの人員を4,000mの深さまで運ぶことができたのだろう。潜るたびに毎回分解し、きちんとメンテナンスをする前提であれば悲劇も起きなかったのかもしれない。先に出したかいこうの例でも長年の慣れが原因だった旨が失敗百選のページには記載されている。

潜る速度についてもびっくりしたので備忘録としてメモしておく、
沈降速度:

最後に、今回亡くなった方たちの冥福をお祈りいたします。


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