建設機械の遠隔化と映像伝送
コマツが建設機械向け遠隔操作システムを開発、お客さまへの提供を開始したり、建設機械の遠隔操作が最近話題。
コマツの例では従来からのラジコンの指令と映像伝送を組み合わせている。この映像伝送、建設機械の遠隔操作としては従来から存在している。建設マネジメント技術2013年6月号には「「無人化施工」による災害復旧と今後の取り組みについて」という記事が出てくるが、ここでもラジコンの指令と映像伝送の組み合わせになっており(図5)、映像について注目すると、AVエンコーダ・デコーダと、TCP/IPの組み合わせとなっている。
このTCP/IPを利用した映像伝送については上記のように歴史があるとともに、コロナの関係で一気に普及したウェブ会議などで、低遅延で利用できるサービスも増えた。
そこで、バックボーンとなる映像伝送技術についてメモしておく。
通信プロトコルの基盤:TCPとUDP
映像伝送では、違和感のない遅延と、必要な画質の両方が問題。かつ、ユースケースによっては適切な相手に情報を送る必要がある。通信プロトコルの基盤となるTCPとUDPそれぞれどちらを使うべきか考える。
画質を確保し、かつ適切な相手に情報を送るには、通信途中で情報が失われないようにすべての情報を送れてかつ、ハンドシェイク処理もあるTCPが適するが、情報のロスをなくすため再送も行うので遅延が大きい。
一方でUDPは、ハンドシェイク処理もなく情報を垂れ流すだけ、途中で情報が欠けても、前後関係だけは維持して情報を送り届けようとする。遅延に優れるとはいえ背反も。
そこで両方を組み合わせて映像伝送する手段を考えることになる。
TCPとUDPの組み合わせ:RTCP/RTPとその発展形
ならばハンドシェイク処理をTCPで(RTCP)、映像はUDPベースで(RTP)、という方式がある。これには発展形があり、Microsoft Teamsではセキュリティに配慮してSRTPが使われている。
エンコードとでコード:映像の圧縮ありなし
映像信号をIP伝送できるようにすることをエンコード、伝送されたものを映像信号に戻すことをでコードという。
SDI over IPと呼ばれる映像伝送がある。これは映像の圧縮などせず、放送局などで使われるSDI(HDMIとは伝送方式が違うが似たようなもの)をUDPに乗っけてそのまま送るようなことが行われる。難点は非圧縮ゆえ伝送量が大きく通信経路の安定性に大きく影響受けること。有線接続が前提といえる。このままでは、現場を動き回る建機の遠隔操作にはとても使えないだろう。
そこでNDIやSRTなど、圧縮して映像を伝送をする方式がある。
映像以外も送りたい:WebRTCなど
WebRTC (Web Real-Time Communication)はAPIも含む。data channel とMedia Channelがあり、映像や音声以外も送ることができる。
こうなってくるとROSとも相性が良く、ロボットの遠隔操作にもそのまま使えそう。
独自伝送方式によるユースケース対応
ネットワーク越しとなると、様々な要因で通信の安定性が損なわれる可能性がある。そのような環境でも高品質の映像伝送を実現しようとなると、ユースケースに応じて(通信の安定、という要件を定義して)対応した独自プロトコルという話になるだろう。
ソリトンシステムズは、RASCOW2と呼ばれる独自プロトコルを開発しており、こちらもコマツと遠隔制御に利用している。
ソリトンの超短遅延映像伝送技術が建機の遠隔制御に活用(ソリトンのプレスリリース)
まとめ
建機の遠隔操作は古くて新しい。
映像伝送は画質や遅延、安定性さらにサイバーセキュリティの考慮と、技術的にもチャレンジングなテーマがまだまだ残っており、引き続き発展していくだろう。
新しい技術に継続して向き合っていきたい。
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